裸蹄のススメ

馬に蹄鉄は要りません。


蹄鉄は、蹄を保護する道具として認識されていますが、実は、ヨーロッパの貴族のカッコつけのための道具でした。一種の装飾品です。日本では、明治に入るまでどの馬も全て裸蹄で過ごしていました。それで泥だらけの田んぼで連日仕事をこなし、特に問題は起きなかったのです。



明治以降ヨーロッパ文化を無批判に日本に導入した結果、今、蹄病・脚疾患が多発しています。もうそろそろ、蹄鉄を見直すべき時期ではないでしょうか。

 

蹄は元来、蹄叉で体重を支え、蹄壁は蹄叉の保護カバーになるよう構成されています。蹄鉄を履かせると、体重を支える部位が蹄壁に変わってしまい、蹄叉が廃用萎縮を起こします。

 

蹄叉は元は天然のクロックスのようなもの、それが失われると、

 

  1. 「脚循環」(足を踏むたびに血液循環が起こる)が失われてしまう。
  2. 蹄叉が培っていた「衝撃吸収」がなくなり、地面の踏むたびに衝撃がダイレクトに身体に戻ってしまう。従って関節の故障を起こしやすくなる。
  3. 蹄叉は滑り止めの機能も持つが、それが失われるので、滑り易くなる。

 

参照映像:血液循環が滞っている一本の肢(青い部分)だけが蹄鉄を履いています。

 

 

また、蹄はタンパク質からできています。蹄鉄の悪影響は蹄自体にも現れます。

 

  1. 蹄鉄は鉄製かアルミ製、強度があり過ぎるから蹄壁の支える力が弱くなってもとりあえず差支えない。結果蹄壁も廃用萎縮を起こす。蹄質が弱く、もろくなってしまう。
  2. 蹄鉄の釘は、どんなに丁寧に上手に打っても、毛細管現象 によって、新旧の釘穴から汚水が蹄内に浸透してしまう。従って蹄の感染が起こり易くなる。
  3. 日本はヨーロッパより湿度が高く、蒸し暑い。蹄の伸びも速いので1カ月に1回(ヨーロッパでは1.5カ月に1回が普通)は打ち替えることになる。釘穴も増える。ヨーロッパより、はるかに感染を起こしやすい環境といえる。

 


蹄鉄自体の問題点も!!

  1. 蹄鉄は厩舎等の床材の大半を占めるコンクリートと相性が極めて悪い。滑り易く踏ん張りがきかないので厩舎内ですら、横転の事故につながる。いつもいつも「滑るのでは」と気を使って生活させられることになる。当然故障も起こり易くなる。
  2. 蹄鉄を打つ作業は重労働の上に危険も大きい。かなりの火力も必要で、馬にも装蹄師さんにも地球にも優しくない。
  3. 様々な大きさの蹄鉄や釘・道具を揃えなければならない。利幅も小さい。

 

もし、馬に蹄鉄が必要なら、最初から馬の体に備わっているはずです。

 

それに日本では、今現在「装蹄師」が激減しています。

 

蹄鉄をやめれば、今よりはるかに蹄の管理がしやすくなり、高い装蹄代も必要なくなり、馬の故障も減る。いい事づくめだと思いませんか?

 

しかし、今まで蹄鉄に頼りっぱなしになっていた蹄から、いきなり蹄鉄を外すのはいくらなんでもランボウ過ぎ!!「裸蹄へのロードマップ」を必ず参照してください。