ハミなし頭絡 よくある質問
この頭絡を初めておっかなびっくり使用してみて、その有用性に驚愕して1年以上経ちました。そのまま販売まで行うようになり、改めて今までの乗馬のあり方・人と馬の関係を根底から覆しかねない、この頭絡の革新性をまざまざ感じています。
新しいものには不安がつきもの。特に乗馬における頭絡は、騎乗者の安全を左右する重要な馬具の一つであるだけに、「ハミがない」という事に関する疑念や不安があるのは当然でしょう。代表的な疑問・質問についての回答を掲げます。
1)ハミなし頭絡の構造がよく分かりません。
この頭絡の構造は、左図のようになっています。
特徴的なのは、項革から手綱まで無駄なく連結されており、頭絡の各パーツが独立していない点です。
従来の頭絡は、一見しっかり馬の頭部をホールドしているように見えますが、実は、それぞれのパーツがバラバラに分離していて、乗り手と馬を直接繋いでいるのはハミと手綱だけです。従来の頭絡はその欠陥を補うためにコンビ鼻革やぺラム・大勒ハミといった道具で、馬の口を縛りつけて無理やりホールドしています。それだけ頭絡は重くなり、大勒ハミなどを併用すると相当な重さを馬の下額にかける事になってしまいます。
この頭絡は、従来のそうしたイングリッシュ頭絡に比べると構造がはるかにシンプルです。軽く、馬の顎に負荷をかけません。ウエスタン頭絡と比較しても、構造上の優位性は変わりません。元来ウエスタン乗馬における手綱の指示は、馬の首に当てて行いますから、ハミは特に必要ないものなのです。
2)どのようにして制御するのですか?
通常のハミ付頭絡と特に変化はありません。しかし、この頭絡は馬の頭部全体に作用しますので、ハミによるより、楽に、細かい指示を出すことができます。方向転換は、この頭絡の方がよほど簡単です。
3)ハミがなくて、馬はちゃんと止まってくれるのでしょうか?
動くものに対して最も重要な指示が「停止」でしょう。日本の乗馬クラブのほとんどがサラブレッドを主に使っているために、「止まらないのではないか」という不安が出てくるのも当然かと思います。
結論から言いますと、この頭絡は、特にサラブレッドに対して有効だと思われます。サラブレッドは、ほぼ全員が最初に競走馬として調教されてしまっていますが、その結果ハミに対して「かかる」ようになっています。従って、ハミを手綱で引いても、それを「停止」の指示として理解しづらいのです。この頭絡を使って、手綱を引くと、馬の頭全体がホールドされますが、これは、サラブレッドにとって、実に理解し易い「停止」の合図として受け止められます。従って、彼らは素直に止まってくれるのです。最初は戸惑う馬も多いのですが、何回か繰り返すと、すぐに理解してくれるようになるでしょう。
4)無口に手綱を付けたようなものではないのでしょうか?
無口頭絡に手綱を付けたものは、馬の頭のどこもきちんと押さえていません。制御に用いるにはあまりに不完全です。この頭絡は、そうしたたぐいのものとは全く構造が異なります。初心者に使える根拠は、ホールド力の強さ、にもかかわらず、馬が嫌がらない、という点が大きいと思います。
5)従来のハミのない頭絡(ハックモア等)とどこが違うのでしょうか?
ハックモア等は、ホールド部分が鼻梁に限られています。従って、方向転換について、使い勝手が悪いようです。勿論、ハミ付き頭絡よりもずっと馬が動くようになった、という感想は、従来のハミなし頭絡でもしばしばいわれています。ハミは、馬をそこまで抑圧するものなのでしょう。
しかし、ハックモア等は、そのスタンスが「ハミにどうしてもなじまない馬向け」ということになっており、あくまでハミ付き頭絡の補助的な馬具どまりとされています。また、操作性にやや問題があり、初心者は使いにくいものです。Dr.Cook's ハミなし頭絡の画期的な点は、初心者から安全に使える、という点でしょう。
6)「ハミ受け」はどうなるのでしょうか?ハミがなければ「ハミ受け」もできないのでは?
「ハミ受け」とは、ハミで馬の頭を押し込むことではありません。馬の重心を後ろにずらし、前肢が軽く楽に動かせるようにする事、馬が乗り手に集中して指示された運動を的確にこなす事を指すのです。特にイングリッシュ乗馬では、その先に「型」としての「ハミ受け」がようやく成り立ちます。
この頭絡は、そこに至る乗り手の技術上達を無理なくサポートしてくれます。乗っているうちに、馬の重心が少しずつ後ろにずれてゆくようになってくれるのです。「型」をハミや補助具等でむりやり仕込む、従来の調教手法や乗り方では、確実に馬は故障します。また、それから逃れようとするために反抗が生じ、乗り手を危険にさらすのです。
当会フェイスブックページでは、この頭絡を使って騎乗しているビデオを多数ご紹介しておりますが、どの馬も、自然に「on the bit」の状態にある事にご注目ください。
7)馬が突然暴れて怖い思いをしています。ハミがないとますます暴れて収拾がつかなくなるのでは?
馬が騎乗中に突然暴れる原因は、従来「物見」と言われてきました。世話人が経験しただけでも、あらゆる刺激に馬は怯え、突然暴れて乗り手を振り落とします。怖がりだから、だけが原因とは到底考えられない、というのが獣医師としての世話人の疑問でした。ハミなし頭絡を使用し始めて理解したのは、どうやら、ハミによって常にイラついているところに別の刺激が加わり、その結果「暴れる」引き金が引かれてしまうものらしい、ということです。 それが「物見」という一言で片づけられてしまってきたのは、騎乗にハミが前提になってしまっている、従来の馬乗りの方々の固定観念に由来するものです。
ハミを使わないということは、暴れる根本的な原因が排除されることと同義です。
この頭絡が初心者に向いているのは、その点からもいえます。馬に対する信頼感がなければ、乗馬は上達しようもないからです。
8)ハミ付の馬が普通なので、ハミなし頭絡に慣れてしまうとハミ付の馬に乗れなくなってしまうのではないかと、不安です。
この問題は、世話人も常々感じている事です。Dr.Cook'sハミなし頭絡と、従来のハミ付頭絡とは、操作法に矛盾点はありません。しかし、操作の効果は異なります。世話人は、ハミ付き頭絡を使うたびに、その制御性の悪さに辟易しています。これは、比較対象ができてしまったので気付いた事ではありますが・・・・・・・。日本で乗馬を習っている方の大半は、ハミ付き頭絡の制御性の悪さを、ご自分の技術力の無さと勘違いされています。その結果、落馬して怪我をしたり、乗馬に挫折する方が多いのは、大変残念な事です。
ハミ付き頭絡をお使いになって、この馬はなんて扱いづらい!と思われる場合には、技術のせいや馬のせいではなく、道具のせいである、と割り切って乗って頂くのがよいかもしれません。
9)競技はどうなのでしょうか?ハミなし頭絡は認められていますか?
現在、馬場馬術では、日本でも世界でも「ハミなし」は認められていません。従って、馬場馬術競技を目指している方にとっては、「ハミなし頭絡」は使いたくとも使えない、という厳しい状況になっております。これは、Dr.Cook'sハミなし頭絡が生まれてからまだ、20年も経過していないという歴史的な状況、また、抗議の声を上げたくてもできない、お馬さん達の気の毒な状況が、理由として大きいでしょう。
競技につきましては、要は「規則」なわけですから、ハミなし頭絡を使う方が増え、無視できない人数になればおのずと変わると考えています。ドイツの馬場選手の方には、普段の練習ではハミなし頭絡を使い、本番の時だけ大勒で、という方もいらっしゃるようです。馬の健康やモチベーションを考えれば、こうした方法は、現状ではかなり使えるのではないか、と思います。
障碍馬術や、エンデュランス・トレッキングでは競技に際し、こうした制限はありません。この頭絡が向いている競技でもあります。この競技で愛用者が増える事を願っています。世話人は障碍馬術を自馬と一緒にトレーニングしておりますが、とにかく馬のトレーニングが簡単なので、楽しくてしょうがありません。馬が競技を楽しんでくれる、のは、競技者にとっても喜ばしい事ではないでしょうか。