Dr.Cook’sハミなし頭絡の特徴

従来のハミ付き頭絡には馬の操作に関して、致命的な欠陥がいくつもあります。気付きにくい欠陥を挙げると・・・・・・

 

  1. 構造は複雑なのに、馬と直接コンタクトをとる頭絡のパーツはありません。馬の顔にただ巻き付けているだけです。手綱と接続しているのはハミだけで、このハミも頭絡との接続はいい加減です。
  2. ハミは馬の歯槽間の幅より長めです。しかし、長過ぎると方向転換を指示できないので、少し長めという、つくりにならざるをえません。その結果、以下の事が起こりえます。

 

  • ハミの折れ曲がる部分で、馬の口腔内をいきなり挟み込んだり、巻きこんだりしかねません。
  • また、手綱の動きに伴ってハミの中央にあるジョイント部分が脈絡なく動き、馬の口腔内を勝手に刺激してしまいます。
  • 方向転換や停止・減速の指示で、どうしてもハミを引っ張って行うことになります(これについて、半減脚で行うように、とよく言われますが、実際には、相当の上級者でもハミを引っ張っています。2011年度全日本大障碍選手権を見ていても、そんな操作のオンパレードでした)。
    こうした指示は、馬に対して全て「不快感」を与えて行うものです。
    見ようによっては虐待まがいです。しかも、馬はその指示があまりに脈絡がないので、結局自己判断で動くことが多くなります。
    「言う事を聞いてくれない」のは、根本的にはこうした、ハミの制御性の悪さに由来しているのです。馬のせいでも、人のせいでもありません。

 

馬はこの不快感から逃れようとして、様々な反応を起こしています。例えば

 

  • 頭を振って、ハミを外そうとする。
  • いきなりの口腔刺激に外部の刺激が加わった時に怯えて横っ跳びする。
  • イライラして、立ち上がったり跳ねたりする。他の馬に当たり散らす。
  • ハミが口に当たるのが怖くて、駆歩をしたがらない。
  • よだれを垂らす。
  • 頭絡を付けさせたがらない。

 

こうした事象はしかし、人間から勝手に解釈され「物見」「反抗・わがまま」「リラックスした証拠」などと誤解されてしまっているのです。この解釈は全て、間違いです。馬が話せたら

 

「ふざけるな!!!!」

 

と叫んでいる事でしょう。

タフツ大獣医学部外科学名誉教授のDr.Robert Cook博士は、獣医師として、こうしたお馬さん達の声なき声に耳を傾け、この頭絡を開発しました。

 

 

左図はこの頭絡の全体像です。頭絡の全てのパーツが密接に連絡しているのが構造上の大きな特徴です。  
特に、普通の頭絡では「喉革」にあたるパーツが顎の下を通って交差し、反対側の手綱と直接連結しているのが、革新的です。

 

手綱を引くと、その力は引いた方向に向かって、馬の頭全体を確実に向けます。
その作用は直接的であり、かつ、馬に不快感を与えません。停止の場合も、両手綱を引くことで馬の頭全体をホールドし、確実に停止を指示できます。
操作の簡便さは、馬に取っても理解し易いので、馬は落ち着き、言う事を聞いてくれるようになるのです。
操作が簡便で、力が必要がないので、女性や子供・年配の方にも向いています。

 

こうした「頭全体をホールドする」機能は、伝統的なハミのない頭絡(ボザールやハックモアなど)にもないものです。この頭絡が初心者にも向いているのは、そうした理由があります。